◇◆ ミニレクチャー
「広告に対する各種規制の法的性格 〜表現の自由との関係〜」 ◆◇
ギリアド・サイエンシズ株式会社
法務部ディレクター 加賀美 有一 氏
憲法21条1項(表現の自由)は、立憲民主制の政治過程にとって不可欠の権利として、憲法の人権規定の中でも特に手厚く保護すべきものとされています。これは、表現の自由を封殺してしまうと、政治的意見の表明を含む政治活動ができないため立憲民主制の存続が危ぶまれることになるからです。
もとより、人権は他者の人権と抵触することもあるため、まったく無制限に保障できるものではなく、典型的には各種の法律による規制というかたちで行使できる範囲が調整されます。
そして、表現の自由に対する規制は、
1. その内容自体を規制する法令
2. 表現方法を規制する法令
3. 虚偽の表現または他者を害する表現を規制する法令
に大別できます。
国家により特定の内容の表現が規制される場合、その表現内容を構成する情報は発信の場を完全に封じられてしまうのに対して、特定の表現方法が規制されている場合は、規制されていない表現方法による情報発信の余地が残ります。このため、表現内容自体を規制する場合は、表現方法を規制する場合に比べて、規制をすることにつきより高度な正当化理由が要求されます。
医薬品を含む各種の製品の広告も、一般に憲法21条1項の保護を受けるとされています。したがって、薬機法66条(虚偽誇大広告の禁止)、67条(医薬品の一般人に対する広告の制限)、68条(承認前の医薬品等の広告の禁止)および業界の自主規制による誹謗中傷の禁止は、表現の自由の制限と捉えることができます。そして、68条は上記1の内容規制、67条は2の方法規制、66条および業界の自主規制による誹謗中傷の禁止は3に該当します。
本講演では、表現の自由の規制が内容規制であるか方法規制であるかによる違いを考慮しつつ、特に68条および67条の下で許容される広告活動の範囲を明らかにすることを試みました。